遺品整理・実家片付け

相続放棄した後、実家の片付けは誰がする?引継ぎ先と進め方

相続放棄のあと、実家の家財を誰が片付けるのかをやさしく説明します。すぐ捨てず、相続人、鍵や家財、管理会社の期限から確認しましょう。

封筒と室内写真と鍵を前に状況を整理する女性
目次
  1. まず、この三つだけ確認してください
  2. 相続放棄をした人が、当然に片付け役になるわけではありません
  3. 手元にある物は、捨てずに保ってください
  4. 家族全員が放棄しても、管理する人は自動では決まりません
  5. 管理会社には、このように伝えてください
  6. 水漏れなどがあれば、その場所だけ対応します
  7. 次の人へ、鍵と一緒にこのメモを渡します
  8. 今日することは、片付けではなく一枚のメモです

父の相続を放棄したあと、管理会社から「部屋を空にしてください」と連絡が来た。鍵は自分が持っている。このようなとき、どうすればよいのでしょうか。

結論からいうと、すぐに家財を捨てたり売ったりしないでください。先に「次に誰が管理するのか」を確認します。

相続放棄をした人が、そのまま片付けの責任者になるわけではありません。ただし、いま自分が預かっている鍵や家財を、勝手に放置してよいとも限りません。まずは物を減らすのではなく、現状を写真とメモに残しましょう。

鍵と室内写真、封筒、白紙の書類、メモを並べた机
片付ける前に、鍵、室内の様子、届いた書類を写真とメモに残します。

まず、この三つだけ確認してください

  1. ほかに相続人がいるか
  2. 自分が鍵や家財を預かっているか
  3. 管理会社から期限を言われているか

ほかに相続人がいるなら、その人へ鍵や室内の状況を伝えます。誰が相続人か分からない場合や、家族全員が放棄した場合は、家庭裁判所や弁護士へ確認します。

自分が鍵や家財を預かっているなら、「何を持っているか」「どこにあるか」「いつから預かっているか」を書き出してください。このメモが、相談するときにも引き渡すときにも役立ちます。

管理会社から期限を言われた場合も、その場で「全部片付けます」と約束する必要はありません。まず期限と理由を書面でもらいましょう。

この段階で行うのは、次のような記録です。

  • 玄関、各部屋、冷蔵庫の中を写真に撮る
  • 鍵が何本あるか数える
  • 管理会社から連絡が来た日と担当者名を書く
  • 水漏れや開いた窓など、急ぐ場所だけ確認する

反対に、家財を捨てる、売る、親族へ配る、遺品整理業者へ家全体の処分を頼むことは止めておきます。元に戻せないことは、確認が終わってから行えば大丈夫です。

相続放棄をした人が、当然に片付け役になるわけではありません

法律上、相続放棄をした人は、その相続では初めから相続人ではなかった扱いになります。ですから、放棄した人が当然に家財を処分する役になるわけではありません。

ただし、あなた以外の家族が相続人として残っていることがあります。同じ順位の相続人がいる場合も、後の順位の人へ相続が移る場合もあります。

そこで、家族へ連絡するときは「あなたが片付けてください」と決めつけず、次の事実だけを伝えます。

  • 亡くなった日
  • 相続放棄が受理された日
  • 鍵を持っている人
  • 室内に残っている物
  • 管理会社から言われた期限

連絡先が分からない親族がいても、家財を動かす理由にはなりません。分かる氏名や続柄だけをメモし、家庭裁判所や弁護士へ「次に誰へ確認すればよいですか」と尋ねてください。

まだ相続放棄をする前、または受理されたか分からない段階なら、先に相続放棄を考えているときの遺品整理を読んでください。捨てる、売る、持ち帰る前に、どこで止めるべきかを確認できます。

手元にある物は、捨てずに保ってください

法律には「現に占有している財産」という言葉が出てきます。難しく見えますが、まずは自分の手元や自宅にある物、鍵を持って出入りしている部屋を思い浮かべてください。

相続放棄をした時点で、そのような財産を実際に預かっている人には、次の相続人や相続財産清算人へ渡すまで、状態を保つ義務が生じることがあります。

ここで必要なのは「片付け」ではなく「保つこと」です。

  • 売らない
  • 捨てない
  • 人に渡さない
  • 勝手に別の場所へ運ばない

水漏れを止めた、窓を閉めたなど、家を守るために行ったことは、前後の写真と日付を残します。どこまで手を付けてよいか迷ったら、「この品物を、このように動かしてよいですか」と具体的に弁護士へ聞いてください。

家族全員が放棄しても、管理する人は自動では決まりません

「家族全員が放棄したら、もう誰にも聞けないのでは」と不安になりますが、確認する窓口はあります。

家族全員が相続放棄をした場合でも、自動的に誰かが家や家財を管理してくれるわけではありません。

必要に応じて、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選びます。これは、残った財産や借金を整理する人です。選んでもらうには申立てが必要で、費用がかかる場合もあります。

まず家庭裁判所へ「相続財産清算人が必要な状況か」を確認してください。そのときは、次のメモを手元に置きます。

  • 亡くなった人の最後の住所
  • 分かる範囲の家族関係と相続放棄の状況
  • 家や預貯金、請求書などの手掛かり
  • 鍵や家財をいま誰が持っているか
  • 管理会社などから言われている期限

家庭裁判所では手続の案内を受けられます。ただし、「この家財を捨ててよいか」といった個別の判断は、弁護士へ確認してください。

電話をするときは、「何をすればよいですか」とだけ聞くより、次のように伝えると話が早くなります。

父の相続放棄は○月○日に受理されました。いま私が賃貸の鍵を一本持っています。室内には家具と冷蔵庫の中身が残っています。管理会社から○日までに返事を求められています。私が行ってよいことと、止めておくことを確認したいです。

分からない項目は「分かりません」と伝えてかまいません。全部調べ終わってから相談する必要はありません。

管理会社には、このように伝えてください

賃貸の管理会社から連絡が来ても、すぐに片付けを約束しないでください。次のように伝えれば十分です。

相続放棄が受理され、家財を扱える人を確認しています。室内で急いで対応が必要なことと、契約上の期限を、分けて書面で教えてください。

そして、次の四つを聞きます。

  • 契約の名義人
  • 部屋を確認したい理由
  • 退去や鍵返却の期限
  • 鍵を誰が何本持っているか

管理会社との期限と、家財を処分できるかどうかは別の問題です。分けて確認しましょう。詳しい聞き方は賃貸住宅の遺品整理と退去の順番でも説明しています。

電話だけで話した場合は、通話後に「本日のお電話では、室内確認は○日、鍵の返却期限は○日と伺いました」と短いメールを送ります。言った・言わないを避けるためで、難しい文面にする必要はありません。

水漏れなどがあれば、その場所だけ対応します

水漏れ、腐敗、害虫、開いた窓などがあれば、何もしないまま待つのも危険です。

まず、その場所の写真を撮ります。そのうえで管理会社などへ連絡し、必要な範囲だけ対応してください。「緊急だから」と家財全体を捨てることは避けます。

次の人へ、鍵と一緒にこのメモを渡します

次に管理する人が決まったら、鍵だけを渡して終わりにしません。次の五つを、一枚の紙やスマートフォンのメモにまとめます。

  1. 鍵の本数、保管者、複製の有無
  2. 部屋ごとの写真と撮影日
  3. 通帳、契約書、請求書などがある場所
  4. 管理会社や親族から来た連絡
  5. 家を守るために行ったことと、支払った費用

渡した日と相手の名前も残してください。郵送する書類は、原本が必要か、写しでよいか、追跡を付けるかを先に確認します。

引き渡す相手には、メモを一緒に見てもらい、「鍵は二本」「請求書は居間の青い箱」など、一つずつ確認します。受け取った人から、日付と名前をメッセージで返してもらえば、長い受領書を作らなくても記録になります。

今日することは、片付けではなく一枚のメモです

紙を一枚用意し、次の五つを書いてください。

  • 相続放棄が受理された日
  • 自分が持っている鍵や物
  • ほかの相続人を確認したか
  • 管理会社から言われた期限
  • 水漏れなど、急いで確認する場所

このメモを見ながら、手続は家庭裁判所、家財を動かしてよいかは弁護士、契約の期限は管理会社へ聞きます。

引継ぎ先と動かしてよい範囲が確認できたら、次に遺品整理を始める時期と順番を見てください。確認済みの物だけを、いつから片付けるか決められます。

いま急ぐのは、物を減らすことではありません。次に管理する人が分かるまで、捨てずに記録を残すことです。

参考にした資料(4件)

相続放棄後の保存、引継ぎ、家財処分、賃貸契約、清算人選任の必要性は個別事情で異なります。申述手続は家庭裁判所、個別行為は弁護士等、住まいの契約は管理会社・貸主へ分けて確認してください。