墓じまいの進め方|家族への相談から改葬までの順序
墓じまいを考え始めた人に向けて、家族との相談、新しい納骨先、現在のお墓、改葬許可、遺骨の移動と墓地返還までの順序を一次資料に基づいて整理します。

「墓じまいを考えているけれど、まず誰に相談すればいいのだろう?」
そんなところで手が止まっていませんか。石材店へ撤去費用を聞く前に、家族の気持ちや次の納骨先を確認しておくと、その後の話が進めやすくなります。
墓じまいは、墓石を片付けるだけの作業ではありません。現在のお墓から遺骨を取り出し、別のお墓や納骨堂へ移す場合は、法律上の「改葬」に当たります。
家族への相談、次の納骨先、現在のお墓、自治体の許可、墓石工事。この順に一つずつ確認していけば大丈夫です。最初から全部を決める必要はありません。
墓じまいと改葬を分けて理解する
日常会話では、墓石を撤去して墓地を返すことまで含めて「墓じまい」と呼ばれます。一方、厚生労働省が掲載する「墓地、埋葬等に関する法律」では、改葬を、埋葬した遺体や埋蔵・収蔵した焼骨を別の墳墓または納骨堂へ移すことと定義しています。
同法第5条では、改葬を行うには市町村長の許可が必要とされています。第5条第2項では、改葬の許可を出すのは、遺骨が現在ある場所の市町村長です。
つまり、次の納骨先が別の都道府県にあっても、最初に確認する申請先は、現在のお墓がある市区町村です。具体的な窓口名、申請書、添付書類、手数料、郵送対応の有無は自治体によって異なるため、現在のお墓の所在地を基準に調べます。
「墓じまい」という名称の申請をするのではなく、遺骨を移すための「改葬許可」を確認する、と覚えておくと窓口を探しやすくなります。
墓じまいの基本の順序
1. 家族と「なぜ整理するのか」を共有する
最初に考えたいのは、業者ではなく「なぜ今、整理したいのか」です。
- お墓を守る人が遠方に住んでいる
- 管理を次の世代へそのまま残したくない
- 自分たちがお参りしやすい場所へ移したい
- 維持費だけでなく、掃除や連絡の負担も見直したい
同じ「墓じまい」でも、目的が違えば次の供養先も変わります。家族には、すでに決めたこととして伝えるのではなく、困っている点と今後の希望を分けて共有します。
お墓の名義人、主にお参りしている人、遺骨と関係の深い親族が誰かも整理しておきましょう。全員の考えが同じになるとは限りません。「お参りする場所がなくなるのでは」と心配する方もいるでしょう。費用だけで話をまとめず、これからどこで手を合わせられるのかまで一緒に伝えると、気持ちをすり合わせやすくなります。
2. 次の納骨先を先に確認する
改葬許可の申請や現在のお墓との調整では、次に遺骨を受け入れる墓地・納骨堂からの書類を求められる場合があります。先に候補を決め、受け入れ条件を確認します。
確認したいのは、名称だけではありません。
- 誰の遺骨を何体受け入れられるか
- 個別に納める期間と、その後の扱い
- 家族がお参りできる日時や方法
- 宗旨・宗派等の条件
- 初期費用と継続費用
- 改葬許可証以外に必要な書類
契約を急ぐ必要はありませんが、「現在のお墓をなくしたのに、次の納骨先へ移せない」という状態は避けなければなりません。少なくとも受け入れ条件と必要書類を確認してから、現在のお墓の撤去日を決めます。
3. 現在のお墓の管理者へ相談する
寺院墓地なら寺院、公営・民営墓地なら管理事務所へ、墓じまいを検討していることを伝えます。確認する主な内容は次のとおりです。
- 墓地使用者として登録されている人
- 埋蔵・収蔵されている遺骨の記録
- 改葬許可申請に必要な証明や押印
- 墓石撤去業者の指定の有無
- 工事可能な日時、搬入経路、作業上の決まり
- 墓地返還時の状態
寺院との関係では、行政書類だけで話が終わらない場合があります。これまでの供養への感謝と、整理が必要になった事情を落ち着いて説明します。読経や供養、離檀等に関する金額や扱いは一律ではないため、名称だけで判断せず、何に対する費用かを書面で確認します。
4. 現在のお墓がある自治体へ改葬許可を申請する
厚生労働省掲載の法律では、改葬許可は現在遺骨がある場所の市町村長が行います。一般的には、申請者が申請書を用意し、現在の墓地管理者による埋蔵・収蔵の証明や、次の納骨先に関する書類を添えて提出します。
ただし、書類名や証明方法は自治体ごとに違います。次を自治体の公式ページまたは窓口で確認してください。
- 遺骨1体ごとに申請書が必要か
- 現在の墓地管理者の証明方法
- 次の納骨先の受入証明が必要か
- 申請者と墓地使用者が異なる場合の同意書
- 郵送申請の可否と交付までの目安
許可証が交付される前に遺骨を移動しないよう、工事日程には余裕を持たせます。
5. 遺骨を移し、墓石を撤去して墓地を返す
改葬許可証を受け取ったら、現在と次の墓地管理者、墓石工事を行う業者の予定をそろえます。遺骨の取り出し、搬送、受け入れ、墓石撤去、区画の整地は、それぞれ担当が異なることがあります。
当日は、改葬許可証の原本をどこへ提出するか、遺骨の容器や搬送を誰が担当するかを事前に確認します。墓石を撤去した後は、管理者の確認を受け、墓地使用権の返還手続きを完了させます。
費用は「一式」にせず分けて確認する
墓じまいの総額は、墓石の大きさや場所、重機の入りやすさ、遺骨の数、現在の墓地の決まり、次の供養先によって変わります。地域や条件を確認せず、全国一律の相場を当てはめるのは適切ではありません。
見積もりでは、少なくとも次の項目を分けます。
| 区分 | 確認する内容 |
|---|---|
| 現在のお墓 | 証明書、供養、管理上の手続き、未納管理料の有無 |
| 墓石工事 | 墓石解体、基礎撤去、運搬、処分、整地、追加作業 |
| 遺骨の移動 | 取り出し、容器、乾燥等の扱い、搬送 |
| 次の納骨先 | 使用料、納骨費用、管理費、個別安置期間、その後の扱い |
| 行政手続き | 申請書、証明書、郵送等に必要な費用 |
「墓じまい一式」という総額だけでは、どこまで含まれているか比較できません。追加費用が生じる条件と、キャンセル時の扱いも書面で確認します。
よくある行き違いを防ぐチェックリスト
契約前に確認すること
- 家族へ目的と希望を共有した
- 現在の墓地使用者と遺骨の記録を確認した
- 次の納骨先の受け入れ条件を確認した
- 現在のお墓がある自治体の申請書を確認した
- 墓地管理者へ工事と返還の決まりを聞いた
- 見積もりを現在のお墓・工事・移動・次の納骨先に分けた
- 改葬許可証の交付前に遺骨を移さない日程にした
迷ったときは、工事より確認を先にする
墓じまいは、すべてを一度に決める必要はありません。まず、誰と相談するか、遺骨が現在どこにあるか、次にどのような供養を望むかを紙に書き出します。
そこから現在のお墓の管理者と自治体へ確認すれば、必要な書類と工事の範囲が見えてきます。順番が分からないまま契約を急ぐより、確認先を一つずつたどるほうが、家族にも説明しやすくなります。
参考にした資料(1件)
- 厚生労働省『墓地、埋葬等に関する法律』2026年8月9日確認
申請書式と添付書類は、現在遺骨がある市区町村の公式案内を必ず確認してください。