相続した実家を空き家のまま持つ費用|年間負担の計算方法
相続した実家を空き家のまま保有するときの固定資産税、保険、光熱費、交通費、庭や建物の管理費を、自宅の通知書と請求書から年額へ直す方法を解説します。

目次
相続した実家を空き家のまま残すと、毎月の家賃のような一つの請求書は届きません。そのため、固定資産税だけを見て「しばらく持てそう」と考えていても、交通費、庭の手入れ、保険、設備の修理が少しずつ重なります。
年間負担を知るために、全国平均へ実家を当てはめる必要はありません。手元の通知書と直近の請求書を集め、毎年繰り返す費用と、突然発生する修繕を分けて計算するほうが、家族の判断に使えます。
この記事では、空き家を売るべきか結論を急がず、「あと一年持つなら、家族はいくら負担し、何回管理に通うのか」を数字にします。
最初に「毎年」「管理のたび」「臨時」の三つへ分ける
空き家の費用は、支払う頻度で分けると漏れを見つけやすくなります。
| 分け方 | 主な項目 | 計算のしかた |
|---|---|---|
| 毎年または毎月 | 固定資産税・都市計画税、保険、電気・水道等、共同住宅の管理費・修繕積立金 | 通知書の年額、または月額×12 |
| 管理のたび | 交通費、駐車料金、除草、清掃、換気、点検、管理委託 | 1回分×予定回数 |
| 臨時 | 雨漏り、設備故障、鍵・窓・外壁、倒木等の修繕 | 毎年費用へ混ぜず、別枠で予備費を決める |
国土交通省の空き家所有者実態調査でも、維持管理費には税金や管理委託料だけでなく、契約を続けている電話・ガス・水道等、空き家までの交通費、共同住宅の管理費や修繕積立金等を含めています。
まずは金額がすぐ分かる項目を埋めます。見積もりが必要な項目は空欄にせず、「年2回の除草を確認」「保険会社へ空き家時の条件を聞く」のように次の確認を書きます。
固定資産税と都市計画税は通知書の年額を見る
固定資産税は、前年の記憶や相続人同士の分担額ではなく、納税通知書に記載された固定資産税・都市計画税の年税額を確認します。評価額や課税標準額ではなく、実際にその年度に納める税額を年間負担の表へ入れます。
「空き家になると税金がすぐ大きく上がる」と一律には言えません。住宅用地には税負担を軽減する特例がありますが、適切に管理されず、管理不全空家や特定空家として自治体から勧告を受けた場合は、住宅用地特例を受けられなくなることがあります。
大切なのは、将来の税額を自己判断で決めることではなく、現在の通知書を基準にし、自治体から連絡や指導が来た場合は放置しないことです。家の傷みが見つかっているなら、費用計算より先に安全を確保します。
保険は「契約がある」だけで安心しない
火災保険や地震保険の保険料は、保険証券や更新案内から年額へ直します。ただし、住む人がいなくなったことが補償条件に関係する場合があります。
契約先へは、次を伝えて確認します。
- いつから誰も住んでいないか
- 家族がどの程度の頻度で管理するか
- 電気・水道等をどこまで残すか
- 売却、賃貸、再居住の予定があるか
- 建物や設備に現在の不具合があるか
保険を残すか解約するかを、保険料の節約だけで決めないようにします。空き家になった後の確認順は、火災保険を見直す手順でも整理しています。
電気・水道・通信は「止めるか」より用途を決める
誰も住んでいなくても、換気、清掃、通水、修理、家財整理で電気や水道を使うことがあります。一方、今後使わない通信、新聞、定期配送等が残っていれば、支払いだけでなく郵便物や防犯上の負担も増えます。
契約ごとに、直近の請求額を年額化します。
- 契約名と名義人を書く
- 月額または基本料金を書く
- 管理に必要か、停止できるかを決める
- 解約時の機器返却や立ち会いを確認する
電気・水道・ガスを整理する具体的な順序は、空き家のライフラインを止める判断で確認できます。
見落としやすいのは、家族の移動と時間
遠方の実家では、管理そのものより移動負担が大きくなることがあります。往復の交通費、高速料金、駐車料金、宿泊費を一回分にまとめ、年間の訪問予定回数を掛けます。
家族の作業時間も、支払いがないからゼロとは考えません。家族が無理なく続けられるかを判断するため、次のように記録します。
- 往復移動にかかる時間
- 郵便、換気、通水、室内外点検にかかる時間
- 庭木や雑草を自分で手入れする時間
- 写真共有、家族への報告、業者手配の時間
現地へ行く人が一人に偏っているなら、費用の折半だけでなく、担当交代や管理委託も話し合います。
庭・雪・防犯・管理委託は回数から年額へ直す
庭木や雑草、落ち葉、積雪、害虫、防犯は地域と敷地で差が出ます。管理会社へ頼む場合も、月額だけでなく、何を何回行い、異常時に誰へ連絡するかを確認します。
| 管理内容 | 回数を決めるときの確認 |
|---|---|
| 巡回・換気 | 季節、湿気、近隣状況、室内の状態 |
| 庭木・雑草 | 敷地境界、道路や隣家への越境、成長時期 |
| 台風・大雨後 | 屋根、雨どい、窓、外壁、敷地への影響 |
| 防犯 | 鍵、郵便物、照明、窓、侵入痕の確認 |
| 管理委託 | 報告方法、写真、緊急連絡、追加作業の料金 |
空き家管理の初動がまだなら、先に最初の30日で確認する管理チェックリストを終えます。安全な状態が分からないまま、訪問回数だけを減らすのは避けます。
臨時の修繕費は、毎年の管理費と分ける
雨漏りや給排水、窓、外壁、屋根、庭木の倒木等は、毎年同額で発生するものではありません。年間維持費の表へ一つの平均額として混ぜると、実際に大きな支払いが出たときの判断が遅れます。
次の二段に分けます。
- 毎年の管理費:保有を続ける限り、ほぼ繰り返す支出
- 臨時修繕の予備費:不具合が起きたときの修繕に備える別枠
すでに雨漏り、床の沈み、割れた窓、傾いた塀等がある場合は、予備費ではなく現在の課題です。危険な場所へ入らず、必要な点検先へ相談します。
一年分の計算表を完成させる
最後に、次の式でまとめます。
年間負担=毎年・毎月の費用+一回分の管理費×年間回数
臨時修繕は別行に置きます。金額と一緒に、担当者と確認日も書くと、家族会議で「誰かがやるはず」を減らせます。
| 費目 | 年額 | 確認先・根拠 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 税金 | 納税通知書 | ||
| 保険 | 保険証券・契約先 | ||
| 電気・水道等 | 請求書 | ||
| 交通・駐車 | 1回分×回数 | ||
| 庭・清掃・巡回 | 見積書または実費 | ||
| 管理費・修繕積立金 | 管理組合等 | ||
| 毎年の合計 | |||
| 臨時修繕 | 別枠 | 現地確認・見積もり |
立替金と家族の分担を分けて記録する
相続人の一人が税金や交通費を立て替えている場合、「年間いくらかかるか」と「最終的に誰が負担するか」を同じ欄で処理しないようにします。前者は家を持つための費用、後者は家族間の精算だからです。
領収書や請求書の写真を共有し、支払日、費目、金額、支払った人を記録します。共有者がいる場合の負担割合や、相続財産から精算できるかは事情によって異なるため、家族だけで決め切れなければ税理士、弁護士等へ確認してください。
また、まだ請求されていない費用をゼロにしないことも大切です。次回の庭木手入れ、保険更新、冬季の凍結対策等、実施時期だけ分かるものは「未見積もり」として予定表へ残します。金額が確定していない項目が見えるだけでも、急な立替と家族間の行き違いを減らせます。
一年だけでなく、判断する月も置く
年間合計を出したら、「いつまで保有するか未定」のままにせず、次に方針を見直す月を決めます。固定資産税や保険の更新前、雑草が伸びる季節の前、家族が集まる時期等、実際に話せる日を選びます。
その日までに確認するのは、支払済みの費用、臨時修繕、訪問回数、近隣からの連絡、建物状態の変化です。前年の予算ではなく、実際の記録を使って次の保有期間を判断します。
費用が出たら、保有だけでなく四つの方針を比べる
年間負担が分かっても、安いから保有、高いから売却と機械的には決まりません。将来住む予定、家族の希望、賃貸の可能性、建物の状態も一緒に考えます。
売却・買取・賃貸・保有を比べる記事へ、今回計算した年額を持って進んでください。売却も選択肢に残るなら、家財が残る実家の査定準備で、家を空にする前に伝えられる情報を整理できます。
まずは、これから一年保有する場合の金額と担当を、家族で確認できる表にまとめましょう。
参考にした資料(3件)
- 国土交通省『令和6年空き家所有者実態調査』2026年8月24日確認
- 国土交通省『空家法とは』2026年8月24日確認
- 国土交通省『住まいにはどんな費用がかかる?』2026年8月24日確認
税額、保険、基本料金、管理委託、修繕は物件と契約ごとに異なります。通知書、契約先、物件所在地の自治体で確認してください。