相続した実家を片付ける前に|名義・相続登記・家財の順序
相続した実家の片付けを始める前に、遺言と相続人、不動産の名義、相続登記、重要書類、残す家財をどの順で確認するかを法務省の現行資料に基づいて整理します。

目次
「実家を早く片付けなければ」と思いながら、どこから手をつければよいか迷っていませんか。
遠方に住んでいる、家の維持費がかかる、近隣へ迷惑をかけたくない。急ぎたい事情があるほど、目の前の家財から片付けたくなるものです。
ただ、最初から家財を捨て始めると、遺言書や権利関係の書類、家族が残したかった物まで失うおそれがあります。
最初の一日は「片付ける日」ではなく、遺言、相続人、家の名義、重要書類を確かめる日にしてみましょう。順番が見えれば、次に誰へ相談すればよいかも分かってきます。
片付けと相続手続きを別々に考えない
実家には、不動産としての家・土地と、建物の中にある家財があります。さらに、預貯金、保険、契約、借入、税金、公共料金等に関する書類も残されています。
見た目は一つの「実家」でも、確認先は同じではありません。
| 対象 | 先に確認すること |
|---|---|
| 家・土地 | 登記上の名義、相続人、遺産分割、相続登記 |
| 家財 | 所有関係、形見、買取候補、処分への家族同意 |
| 書類 | 遺言、登記、預貯金、保険、契約、税務の手掛かり |
| 空き家管理 | 鍵、火災・漏水、防犯、郵便、近隣、保険 |
| 売却・活用 | 相続登記、家財の扱い、共有者の意向、査定条件 |
片付けの作業日だけを先に決めるのではなく、これらの確認を並行して進めます。
相続した実家を片付ける前の5段階
1. 遺言書の有無と相続人を確認する
最初に、亡くなった人が遺言書を残していないか確認します。自宅で見つかった自筆証書遺言、公正証書遺言、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言では、必要な手続きが異なります。
封印された遺言書らしき物を見つけた場合は、その場で開封せず、家庭裁判所や専門家へ確認してください。遺言書の種類によっては、家庭裁判所での検認が必要になることがあります。
あわせて、戸籍をたどって相続人を確認します。家族が把握している関係だけで判断すると、前婚の子、養子、すでに亡くなった相続人の子などを見落とす可能性があります。
この段階で相続人がそろっていない、連絡が取れない、意見が分かれている場合は、家財を廃棄したり不動産を売却したりする前に、弁護士・司法書士等へ相談します。
2. 不動産の現在の名義を確認する
固定資産税の納税通知書に記載された人と、登記上の所有者が必ず同じとは限りません。登記事項証明書等を取得し、土地と建物の名義、共有者、抵当権等の記載を確認します。
実家だと思っていた建物が未登記だったり、土地の一部が別名義だったり、先代の相続登記が終わっていなかったりすることもあります。売却や担保設定の予定がなくても、まず現在の記録を確認することで、誰の相続手続きが必要か整理できます。
法務省は、不動産を相続した人に相続登記が必要であると案内しています。不動産の所在地を管轄する法務局へ問い合わせると、登記申請手続きの案内を受けられます。
3. 相続登記の期限を確認する
相続登記の申請は、2024年4月1日から義務化されました。法務省の案内では、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記する必要があります。正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
義務化前に発生した相続も対象です。法務省は、義務化前に相続したことを知った不動産について、2027年3月末までに登記する必要があると案内しています。
ただし、起算日や必要な登記は個別事情によって変わります。「家族が住み続けているから」「売る予定がないから」と先送りせず、管轄法務局や司法書士へ確認してください。
相続人同士の話し合いがまとまっていないときは、期限が来るまで何もできないとは限りません。利用できる制度は事情によって変わるため、期限が近い場合は片付けより先に、管轄法務局や司法書士へ相談してください。
捨てる前に確保したい重要書類
書類は、部屋別ではなく種類別に仮置きします。内容が分からない書類をその場で捨てず、「確認待ち」の箱を一つ作ると安全です。
相続・不動産に関する書類
- 遺言書らしき封筒や公証役場・法務局からの書類
- 登記識別情報、権利証、登記事項証明書
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書
- 土地の測量図、境界確認書、建築確認関係書類
- 売買契約書、賃貸借契約書、借地・私道に関する書類
お金・契約に関する書類
- 通帳、証券、保険証券、年金関係書類
- 借入、ローン、保証、クレジットカードに関する書類
- 電気、ガス、水道、通信、新聞、警備等の契約情報
- 税務署、自治体、金融機関から届いた通知
本人確認と家族関係の手掛かり
- 戸籍・住民票等の写し
- 印鑑登録証、実印、マイナンバー関係書類
- 家族の連絡先が分かる住所録や年賀状
- 鍵、貸金庫、保管箱に関する記録
期限切れに見える書類でも、契約や資産の存在を示す手掛かりになる場合があります。内容を確認してから処分します。
家財は「残す・確認する・処分候補」に分ける
家財の仕分けでは、価値を金額だけで判断しないようにします。家族の記憶に関わる物、祭祀に関わる物、借り物、仕事の資料など、勝手に処分できない物が混ざっていることがあります。
残す物
相続人や家族が残すと合意した物です。持ち出した人、保管場所、日付を簡単に記録します。貴金属、現金、通帳、印鑑等は写真と一覧を残し、相続人間で共有します。
確認する物
所有者や価値、処分方法が分からない物です。写真を撮り、確認する相手と期限を決めます。「後で見る」とだけ書くと保留箱が増えるため、誰が判断するかまで決めます。
処分候補
相続人の確認後に、自治体回収、許可業者、買取、寄付等の方法を選ぶ物です。家庭ごみの収集ルールは市区町村で異なります。大量の家財を業者へ依頼する場合は、家庭ごみをどの許可・委託に基づいて処理するか確認してください。
業者へ依頼する場合は、遺品整理業者の選び方|見積もりで確認する10項目もあわせて確認できます。
片付け前に空き家の安全を確保する
相続手続きに時間がかかっても、空き家の管理は待ってくれません。最初の訪問で、次を確認します。
- 玄関、窓、勝手口、物置の鍵
- 雨漏り、漏水、カビ、害虫、倒木等の兆候
- 電気・ガス・水道の利用状況
- 冷蔵庫、給湯器、火気、ブレーカー
- 郵便物、新聞、宅配、回覧板
- 火災保険等の契約と空き家になった場合の扱い
- 近隣へ緊急時の連絡先を伝える必要性
通水や換気が必要な建物もあれば、凍結・漏水対策で止水が必要な地域もあります。一律の対応をせず、建物、季節、地域、保険条件に合わせて確認します。
査定や売却相談は、名義と家財条件を伝えて行う
実家を売るか保有するか決まっていなくても、現状を知るために査定を取ることはできます。ただし、査定額だけで結論を出さず、次の条件を伝えます。
- 相続登記が終わっているか
- 相続人や共有者の合意状況
- 土地と建物の登記状況
- 家財が残っているか
- 修繕、解体、測量等が必要か
- 引渡し希望時期
家財が残ったままの買取と、家財撤去後の仲介売却では、費用と手間の比較条件が異なります。片付け費用だけでなく、売却方法、引渡し条件、税務確認まで含めて判断します。
捨てる前の一日が、後の手続きを軽くする
相続した実家の整理は、物の量だけを見ると始めにくくなります。最初の一日は、片付ける日ではなく、遺言、相続人、名義、重要書類、鍵を確認する日にします。
判断できる人と残す物が分かれば、次の訪問から処分・買取・査定の範囲を決められます。相続人同士の意見がそろわない、期限が迫っている、名義が複雑な場合は、不可逆な処分を止め、管轄法務局や専門家へ相談してください。
参考にした資料(2件)
- 法務省『不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~』2026年8月9日確認
- 法務省『相続登記の申請義務化』2026年8月9日確認
個別の相続人、遺言、登記、税務の判断は、管轄法務局、弁護士、司法書士、税理士等へご確認ください。